スポーツドライビングでは、必ず出てくるアンダーステアとオーバーステアという単語。
一般的には、アンダーステアは曲がり切れない状態、オーバーステアは曲がりすぎる状態を指す、となっている。
ざっくりとした解釈としては間違っていないだろうが、より深く掘り下げて考えたい。
アンダー、オーバーの発生要因はドライバーの運転操作に起因するものと、車両のセッティングに起因するものがある。
また、車両の進行方向に対する頭の向きである「自転」、コーナー全体とライン取りで見た「公転」でのアンダー・オーバーは切り離して考えなければならない。
筆者としては、狙ったラインをトレースできていれば、自転でのアンダー・オーバー姿勢についてはあまり重要視をしていない。
もちろん、限界スピードを無視してコーナーに進入すれば曲がり切れないし、後輪駆動車でコーナリング中にパワーを急激にかけ、無理やりオーバーステア姿勢に持ち込むようなことをするならば、その結果はドライビングに起因するものといえるが、基本的にアンダーステアとオーバーステアの特性は車両のセッティングでどうにでもできるからだ。
割とドライビングに原因があるとして、ひたすら練習を重ねがちであるが、乗った印象でアンダーだと思えば車両側をオーバーステアになるようにセッティングしてみる。オーバーだと思えば車両側でアンダーステアになるようにセッティングしてみる。
ドライバーの感じ方にも個性があるので、同じ車両でもアンダーが強いと思う者もいれば、オーバーが強いと思う者もいる。大事なのは自分にとってのアンダー、オーバーの感覚を定義することであり、それに対処することである。
左利きを無理やり右利きにするようなことをするよりも、左利きなら左利きに使いやすい道具を作った方が理にかなっている。
実際、オーバーな特性が好きな筆者と、アンダーな特性が好きな友人、同じ区間を同じクラスの車両で、タイムを競う実験をしたことがある。
5回ほど走り、勝ったり負けたりだったが最終的なタイムはほぼ同等であった。路面コンディションはドライ、ハーフウェット混在で、所々砂があったり滑りやすい区間もある舗装路で全長5km程のコース。セッティングの方向性が決めにくいシチュエーションだが、両者にとって車両の動きが予測しやすいものであり、コース攻略に集中ができた結果である。予想外の動きをすることも殆どないため、安全でもある。
誰の言葉だったか忘れてしまったが、「車と格闘していては道と格闘できない、道と格闘することに集中するべきだ」という言葉を見聞きしたことがあるが全面的に賛成している。
走り方のクセ、路面コンディション、タイヤのコンパウンド、コースの平均スピード等、様々な要因で、アンダー特性の方が走りやすかったり、オーバー特性の方が走りやすかったりするので、ドライビングを見直すことも大切ではあるが、車両側でセッティングすることであっさり走らせにくさが解消することもある。
速く走らせるためには、よりアクセルを踏める時間が長くなるようにセッティングすると良い。後輪駆動車でパワーをかけるとリアが滑りすぎ、立て直すためにアクセルを戻しているようなら、アンダー方向にセッティングし、前輪駆動車でプッシングアンダーのためアクセルを開けられないようであればオーバー方向にセッティングすれば、アクセルを踏める時間が伸び、タイムアップに直結する。